砂でコーヒーを沸かす機械を輸入してみた☕ ~② 基準適合確認~
更新日:2 日前
お世話になっております。行政書士法人メイガス国際法務事務所の大沢です。

前回のコラムでは、輸入したトルココーヒー用のサンドヒーターが、電気用品安全法施行令別表第二第七号の
(一六)電気こんろ、
(二七)電気コーヒー沸器、
(三一)その他の調理用電熱器具
のいずれかに該当するものだろう、という想定で終わりました。
さて、今回はこちらのサンドヒーターに対して電安法8条1項の検査を行います。なぜ検査を行わないといけないかというと、下図に示す通り、電気用品安全法8条1項で、「電気用品を輸入する場合は、経済産業省令で定める技術基準に適合する必要がある」と書かれています。
(前回のコラムの復習ですが、「電気用品」とは、「電気用品安全法(PSE)の対象となる電気製品」のことです。今回のトルココーヒー用サンドヒーターは、「PSE対象外の電気製品」ではなく、「◯PSEの対象となる電気用品」だったと想定して、所内教育を行っています)
そのため、輸入するトルココーヒー用サンドヒーターが、技術基準に適合しているかを検査/試験する必要があるということです。この検査/試験を、基準適合確認ともいいます。

なお、除外規定で「一 例外的に承認を受けたとき」、「二 試験的に製造し、又は輸入するとき」と書かれていますので、実務ではこれらの除外規定を利用できないかも要確認です。今回は検査/試験方法の所内教育なので、除外規定は利用しません。
技術基準はどこに?
さて、電気用品は経済産業省令で定める技術基準に適合する必要があるということで、その経済産業省令を探さないといけません。
こちらは「電気用品の技術上の基準を定める省令」というそのままの題名の省令があります。ただ、法律の本文にはどこにもこの省令の題名はでてきませんので、やはり少しは自分で探しにいく必要があります。

しかし、この省令を少し読むと「ムムッ!」と驚くかも知れません。なぜなら、具体的なことがちっとも書かれていないのです。

ということで、この「安全に」とか「適切に」といった具体的な内容がわからないので、経産省の通達「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」を確認します。

今回のトルココーヒー用サンドヒーターは、電気用品安全法施行令別表第二第七号の
(一六)電気こんろ、
(二七)電気コーヒー沸器、
(三一)その他の調理用電熱器具、
のいずれかに該当するか不明ですが、いずれであっても別表第二の第七号に該当することは変わらないわけです(そもそもPSE対象外製品ではないという想定です)。
そして、別表第二の第七号に該当する交流用電気機械器具の場合は、「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」の別表第八に、細かい技術基準の解釈が書かれています。

例えば上記は材料についての解釈ですが、「電気用品の技術上の基準を定める省令」では、材料について以下のような記載があるのみでした。
第六条 電気用品には、当該電気用品に通常想定される使用環境に応じた適切な耐熱性、絶縁性等を有する部品及び材料が使用されるものとする。
第九条 電気用品には、発火によって人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれがないように、発火する温度に達しない構造の採用、難燃性の部品及び材料の使用その他の措置が講じられるものとする。
しかし、「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」の別表第八では、上図のように、具体的にどのような物質を使ってはいけないかなどが記載されているのです。ということで、検査/試験の実務では「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」を第一に参照することになります。
別表第八は、以下のURLから確認できますが、全部で291ページもあります。別表第八に基づき検査を行う場合は、これらをすべて理解する必要があります(除外規定が使える場合など、すべての検査/試験をやらずに済むことも多いとはいえ、除外規定適用可否の検討自体はしっかり行う必要があります)。
ちなみに、外国製の電気製品を輸入する場合は、海外メーカーにおいてこれらの試験や、類似する検査を既に行っていることがあります。日本基準で検査がされていれば都合が良いのですが、海外基準の検査しかされていない場合であっても、日本基準に読み替えができることがありますので、まずは試験/検査結果(テストレポート)をメーカーから取り寄せることが大事です。その上で、テストレポートが日本法でも問題ないかリーガルチェックを行いたいところです。
ということで、テストレポートを求めてみました。
弊所「CBレポートや、IEC基準のテストレポートはありませんか?」
先方「トルコ国内専売品なので、ありません」
弊所「了解です。トルコの国内法への適合性を示す資料で良いから欲しいなあ」
先方「トルコ国内専売品なので、何もありません」
ダメでした。

「トルコはEUと関税同盟を結んでいて、CE制度が適用されているので、トルコ製品もテストレポートくらいないとダメなんじゃない…?」と思いましたが、よそはよそ、他国は他国です。
こういう風にテストレポートが手に入らない場合でも、いくつか取れる選択肢はありますが、輸入者側で試験/検査をしてしまうのも一つの手段です。
今回は弊所の若手職員向けの試験/検査実務の教育であるため、実際に弊所ラボで試験を行います。
技術基準に適合しているか検査します(Safety)
ここからは写真が多めになりますが、検査/試験の様子をご紹介します。
本コラム記事の安全試験はすべて弊所ラボで行いました。

こちらは転倒角度測定の様子です。10度、15度と傾斜させても転倒しないことを確認します。ちなみに試買調査結果では、9度傾斜させたときに転倒した商品が、違反事例として紹介されたこともあります(実際に国内で販売されていた商品のため、ここで紹介することは控えます)。
こちらは衝撃試験の様子です。試験機で強い衝撃を与えて、異状が生じないか確認します。
人間の指を模した金属製の試験用プローブ(試験指といいます)で、製品の開口部から危険な充電部や可動部に指が接触して感電・怪我をしないかを確認している様子です。
分解して内部配線を確認し、内部配線に2N の力を加えても高温部や可動部に接触するおそれがないか等を確認しています。
家庭用の100Vコンセントは、常に100Vが来ているわけではありません。電気事業法施行規則第33条では、電力会社が電気を供給する変動幅について、標準電圧に対し維持すべき電圧が明示されています。「一般送配電事業者は、定格100Vのコンセントであれば、実効値95V~107Vの電気を供給するよう努めなさい」と電気事業法(及び施行規則)で定められているのです。(上左図)
そして、電気用品安全法(及び技術基準)では、「電気用品の輸入者は、定格100Vの機器なら、90V~110Vに電圧が変動しても、支障なく運転できることを確認しなさい」と定められているのです(上中図)。
よって、弊所ラボでは、定格の±10%の電圧を出して、それでも問題なく動くかを確認しました(上右図)。


500ボルト絶縁抵抗計により、充電部と人が触れるおそれのある器体の外面との間の絶縁抵抗を測定しています。

平常温度上昇試験や、異常温度上昇試験など、電熱器具として重要な試験も行います。
今回は電気用品名(PSE上の製品分類)が、「電気こんろ」、「電気コーヒー沸器」、「その他の調理用電熱器具」のどれになるか不明という想定でしたが、このどれに分類されるかにより、試験内容も異なってきます。
仮に今回のトルココーヒー用サンドヒーターが「電気こんろ」として扱われるなら、熱衝撃試験(1時間通電し、容器を取り除いた直後、熱板に室温付近の水を約2Lかける)や、落下衝撃試験(熱板上に厚さ3mmの鋼製円板を置き、その上へ鋼製の落下体を高さ40mmから毎分約20回、合計100回落とす)などが必要となります。
これらの試験は、「電気コーヒー沸器」や「その他の調理用電熱器具」の場合は不要です。同様に、「電気コーヒー沸器」や「その他の調理用電熱器具」に分類された場合にだけ必要となる試験もあります。
そのため、PSE試験をするためには、そもそも電気用品名はなにか(PSE上の分類はなにか)が重要となるのです。前回のコラムでは丸々一本使って、どのような電気用品名になるのかを慎重に検討していく過程をお見せした理由は、まさにその工程が、検査/試験でも重要となるからです。
技術基準に適合しているか検査します(EMC)
これまでにご紹介した検査/試験は、「感電しないか?」「怪我しないか?」「火災を起こさないか?」など、安全性に関する内容(安全試験、Safety試験)でした。
それに対して、技術基準省令では以下のように、電磁的妨害による耐性や、雑音の強さについても規定されています。

ここでいう雑音とは、耳で聞く音のことではなく、電子機器の動作や通信に悪影響を与える不要な電磁波(電磁ノイズ)のことです。
つまり、省令17条では、周囲の製品の電磁ノイズを受けて誤作動を起こさないこと(EMS)を、18条では反対に、自分が電磁ノイズを周囲に撒き散らさないこと(EMI)を要求しています。
これら、電磁的妨害に対する耐性(EMS)や電磁妨害(EMI)に関する試験をまとめて、EMC試験と呼びます。
EMC試験の細かい条件などの解釈は、別表第八ではなく別表第十を確認します※。こちらも118ページからなる大作PDFです。
※ 今回は従来の試験方法を学ぶため、経過措置が認められている改正前の別表第十に基づいて試験しました。改正前の別表第十を使用できるのは2028年8月30日までであり、それ以降は別表第十二に基づく試験が必要となります。
ただ問題は、EMC試験はSafety試験と異なり、EMIシールドルームや電波暗室などの、特別な試験室が必要となることです。自分が電磁ノイズを周囲に撒き散らしていないか確認するためには、電磁的に遮蔽されて余計な電磁波が存在しない場所で試験する必要があります。そうでないと、身の回りに飛び交う様々な電磁波のせいで正しく測定できません。
しかし、EMIシールドルームも電波暗室も、弊所ラボには存在しません。本当に高いので。小さめの電波暗室ですら、一部屋作ろうとしたら数千万円~数億円します。そのため、弊所はSafety試験は弊所ラボで行い、EMC試験はEMIシールドルームや電波暗室をお持ちの顧問先企業様の設備や、研究所の施設をお借りして行っています。

今回は10年ほどのお付き合いがある研究所のEMIシールド室をお借りしました。
機材を積んだ社用車で横付けして、自分たちで搬入します。今回は小さめの乗用車で済みましたが、コインランドリーのような大型の製品の場合はトラックで横付けして、ハンドリフターで搬入します。
左:EMC試験の実習教育を受けている弊所の若手職員。
右:EMIシールドルームの扉。電磁波を遮蔽するために分厚い。
ベテラン職員から教わりつつ、EMC試験の結果を見て技術基準に適合しているか判断します。
雑音端子電圧試験。電子機器の電源ケーブルや通信ケーブルなどを通じて外部へ伝わる30MHz以下の電磁波ノイズ(伝導ノイズ)を測定しています。左上図に写っている2台の装置は、擬似電源回路網(LISN)という測定器で、雑音端子電圧を測定しています。めちゃくちゃ高い装置で、短期間レンタルするだけで何十万円もします。
雑音電力測定。電源線を伝導しながら、空間に放射される30MHz~300MHzのノイズの電力(妨害波電力)を評価します。機器の配置もすべて図のように決められています。
ということで、これらの試験結果をすべてまとめたテストレポートを作成し(100ページを超えます!)、法8条1項検査の教育は一段落となりました。次回は8条2項検査の教育をご紹介します。
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