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砂でコーヒーを沸かす機械を輸入してみた☕ ~① PSEの該当性検討~

大沢
4 日前
読了時間: 11分

更新日:3 日前

お世話になっております。行政書士法人メイガス国際法務事務所の大沢です。


コーヒーを淹れる器具といえば、ドリッパー、エスプレッソマシン、フレンチプレス、パーコレーターあたりが思い浮かびます。ところがトルコには、熱々の砂の中へ小さな金属製のポットを差し込み、ゆっくりコーヒーを煮出す方法があります。YouTubeで見たことがある人もいるかも知れません。



映像で見ると、砂の上から泡がふくらみ、沸騰する直前にポットを引き上げる様子がいかにも異国的です。


ということで今回は、この砂を温めるための電気製品を輸入して、PSEの試験をしてみました。要するに金属製の槽に砂を入れ、その下のヒーターで加熱する機械です。


今回輸入した実機。これを弊所ラボで試験します。
今回輸入した実機。これを弊所ラボで試験します。

見た目は、装飾の入った小さな箱です。上部に砂を入れる槽があり、側面には機械式の温度調節つまみがあります。(おっちょこちょいの私が砂を盛大にこぼしてしまったので、上の写真ではかなり量が少なくなっています。)


輸入してまず一番に弊所の教育本部で使ってみようとしましたが、日本の家庭用コンセントでは電圧が足りずに、まともに動きませんでした。この製品はトルコの仕様にあわせて220Vで製造されていますが、日本は100Vのため、一応動かそうと試してみたものの、パワーが足りずに砂は全く温まりません。

不良品というわけではなく、ただ電圧が足りないだけだろうと思い、弊所ラボへ持ち込み、変圧器を通して220Vまで昇圧した電気につなぐと、無事に稼働してお湯を沸かすことができました。


ただし、まだ「製品が動いた」というだけで、安全性が担保されたわけではありません。そのため、今回は電気用品安全法(PSE)の試験を行ってみます。※


※ 今回は所内教育目的で、実際にPSEの試験を行ってみましたが、電気用品安全法は原則として製造・輸入・販売等を行う事業者を規制するものですので、自己使用目的で個人的に輸入する場合は、PSE対応は不要です。そのため、読者の皆様が個人的にトルコ旅行をして、気に入ったサンドヒーターをお土産として買って帰って、自宅で(必要に応じて)昇圧して使う場合は、原則として電気用品安全法の規制は受けません。もちろん、安全性については自己責任となります。

そもそもこのサンドヒーターはPSEの対象か?


PSE対応を検討する際に、まず最初に確認すべきことは、当該電気製品がPSEの対象製品に該当するのかを判断することです。電気製品の中でも、PSEの対象となるものを電気用品といいます。


また、電気用品に該当する場合は、その中でも◇PSE(特定電気用品)と◯PSE(特定電気用品以外の電気用品)のどちらに分類されるのかを確認します。

(◇PSEは「構造又は使用方法その他の使用状況からみて特に危険又は障害の発生するおそれが多い電気用品」が指定されています)。



PSE対象外だった場合は、PSEの試験は不要となります。◇PSEだった場合は、JETやTUV、CQCなどの登録検査機関による検査が必要となります。◯PSEだった場合は、登録検査機関による検査は不要ですが、自主検査が必要となります。


そのため、まずは輸入した製品が電気用品安全法の対象である電気用品なのか(その場合は◇PSEと◯PSEのどちらになるのか)、あるいはPSE対象外となるのかを検討する必要があります。


電気用品の定義は、電気用品安全法の2条1項にあります(下図の青色部)。

電気用品安全法2条。青色部が1項で、非青色部が2項。
電気用品安全法2条。青色部が1項で、非青色部が2項。

電気用品安全法の2条1項本文には、「以下の一号から三号のどれかに当てはまるものが、PSE対象の「電気用品」ですよ」と書かれています。なお、一号から三号とは、青色部の漢数字で「一」「二」「三」と列挙されているところです。


要するに

一号には「一般用電気工作物に接続して用いられる機械等であって、政令で定めるもの」、

二号には「携帯発電機であって、政令で定めるもの」、

三号には「蓄電池であって、政令で定めるもの」、

と書かれています。


今回のサンドヒーターは、発電機でも電池でもないので、二号と三号は関係ありません。


しかし、ややこしい書きぶりの一号は要注意です。一号には「一般用電気工作物」という語がでてきますが、「一般用電気工作物」の身近な例は、家庭用のコンセントです。つまり、「家庭用のコンセントに接続して用いられる機械等であって、政令で定めるもの」は、PSE対象の電気用品となります。


今回のサンドヒーターは家庭用のコンセントに接続して用いられる機械なので、後半の条件の「政令で定めるもの」かどうかを検討することになります。


そして、ここでいう政令とは、「電気用品安全法施行令」のことです。題名には「政令」と直接書かれていませんし、電気用品安全法の本文には政令の題名(電気用品安全法施行令)は出てこないので、法令を読み慣れていない人にとっては理解しにくいかも知れません。


その「政令」の1条と2条を読むと「電気用品安全法施行令の別表第一の上欄に掲げるものが◇PSE」、「電気用品安全法施行令の別表第二に掲げるものが◯PSE」と書かれています。

電気用品安全法施行令の1条と2条
電気用品安全法施行令の1条と2条

ということで、まず別表第一(◇PSE)の方から見ていきましょう。


別表第一。左側が上欄で、右側が下欄。法令は縦書きなので、元は上下にわかれた表なのです。
別表第一。左側が上欄で、右側が下欄。法令は縦書きなので、元は上下にわかれた表なのです。

上の図が別表第一の冒頭部です。上の図の内容がすべてではなく、116品目(本記事公開時点)が指定されています。中には、先程ノートPCの例であげた充電器から、アイスクリームメーカーといった楽しげな装置まで、様々なものが含まれています。


青色部の直流電源装置には、PCやスマホの充電器なども該当します。
青色部の直流電源装置には、PCやスマホの充電器なども該当します。
アイスクリームフリーザーや、アイス用ショーケースといった楽しげな商品も◇PSEの対象です。
アイスクリームフリーザーや、アイス用ショーケースといった楽しげな商品も◇PSEの対象です。

しかし、別表第一(◇PSE)にトルココーヒー用のサンドヒーターらしきものは列挙されていません。ということで、本件製品は◇PSEの対象ではありません。


続いて、別表第二(◯PSE)も見てみます。こちらには341品目(本記事執筆時点)が列挙されています。


別表第二(◯PSE)七号(電熱器具)
別表第二(◯PSE)七号(電熱器具)

別表第二を順に見ていくと、電気トースターや電気魚焼き器など、少し属性の近い製品群が列挙されているのを見つけられます。製品の形状としては(一〇)の「電気火鉢」に似ていますが、ここでは採暖用の電気火鉢が規制されているものの、調理用の電気火鉢は規制されていません。ここは法令用語の基礎的な知識が必要となる箇所です。


仮に、「電気火鉢その他採暖用電熱器具」と書かれていれば、「電気火鉢」と「採暖用電熱器具」が並列に示されていて、「採暖用」であるかを問わず「電気火鉢」が独立して指定されていると読みます。しかし、今回は「電気火鉢その他"の"採暖用電熱器具」と書かれています。

「その他」ではなく「その他"の"」と書かれている場合は、採暖用電熱器具を指定しており、電気火鉢はその例示に過ぎない、という読み方をします。「の」一文字の有無で、意味が大きく変わってしまうのです。法令にはこういう落とし穴がときどきありますので、普段法令を読み慣れない人は、注意が必要です。


ということで、今回のトルココーヒー用サンドヒーターは調理用ではなく採暖用ではないので、「電気火鉢」と見た目や原理が一緒でも、こちらには該当しません。

さらに読み進めていくと(二七)に、さらに関係が深そうな「電気コーヒー沸器」という言葉がでてきました。


おそらく法令を読み慣れていない方や、PSEに詳しくない方は、(二七)の電気コーヒー沸器という文言をみると「これだ!」と飛びついてしまうのではないでしょうか。しかし、私はまだ断定できません。他にも(一六)電気こんろ、(二五)電気保温盆、(二六)電気加温台、(二九)電気湯せん器、(三一)その他の調理用電熱器具についても、候補として検討すべきであると思います。


まず、(二五)の電気保温盆や(二六)の電気加温台について気になった理由は、コーヒーの入った小鍋(ジェズヴェ)ごと保温、加温できるからです。そのため、法令の電気加温台などの範囲はどこまでなのか、経産省の解釈を知る必要があります。


これについては、「電気用品の範囲等の解釈について 平成24・03・21商局第1号」という経産省の通達を読みます。一般的には、「範囲等解釈」と略して呼ばれています。



この範囲等解釈に、電気加温台と電気保温盆の解釈がかかれています。



ということで、今回のトルココーヒー用サンドヒーターは、発熱体が組み込まれた器体を有し、当該器体の上に飲食物の入った食器を載せ、当該飲食物を加温・保温できる電熱器具なので、電気保温盆や電気加温台になりそうなところ、但し書の「当該発熱体が飲食物を沸騰させることができる熱容量を有するときは、この限りではない」という要件にひっかかるため、電気保温盆や電気加温台ではない、と判断できます。


このように、細かい解釈があるため、「これはトルココーヒー用のサンドヒーターなんだから電気コーヒー沸器でしょ!」と名前だけで判断することは難しいのです。


特に今回の製品は、砂を熱媒体として、砂の上に置いた容器を加熱するだけの製品であり、電気製品本体が直接コーヒーを収容・抽出する構造ではありません。また、コーヒー以外の飲料や食品も物理的には加熱できます。よって、安易に「電気コーヒー沸器」とは断定しにくいのです。


「では、範囲等解釈で電気コーヒー沸器の解釈を見ればいいじゃないか」というと、そうはいきません。なぜなら、範囲等解釈には電気コーヒー沸器の解釈が掲載されていないのです。範囲等解釈にはすべての電気用品の解釈が書かれているわけではないのです。


今回の製品は、加熱の原理的には(二九)電気湯せん器に近いのですが、範囲等解釈を見ると「電気湯せん器とは、発熱体が組み込まれた器を有し、当該器に入れた湯を介して調理対象物を加温又は保温する電熱器具をいう。」とされています。「湯を介して」と明確に書かれている以上、「砂を介した場合もこれでいいでしょ!」と安易に類推解釈はできません。


ということで、残る候補は(二七)電気コーヒー沸器以外に、(一六)電気こんろ、(三一)その他の調理用電熱器具です。

(一六)の電気こんろは意外な候補かも知れません。しかし、範囲等解釈で電気こんろの解釈をみると、以下のように説明されています。



確かに、今回の製品はコーヒーを沸かすための製品で、煮焼きをするものではありません。

この解釈では「焼く、煮る等の調理を行う電熱器具」ではなく、「焼く、煮る等の調理を行うことができる熱容量をもつ電熱器具」と説明されています。そして、今回の製品は、実際に煮炊きができる程度の熱容量を持っています。

「こんろ」というには少し奇妙ですが、発熱体 → 砂 → ジェズヴェ(小鍋)→ コーヒーと熱を伝導するだけで、器具本体の役割は、鍋を加熱する熱源です。こんろの五徳の代わりに砂と砂槽があるということです。


この砂と砂槽が解釈にある「なべ等を置くことのできる台」に該当するか否かによって、今回の製品が電気こんろに該当するか否かが決まるといえるのではないでしょうか。


そして、もし当局が、「砂と砂槽を介する構造は、範囲等解釈にいう電気こんろの発熱体・熱板・なべ受けの構造から外れる」と判断した場合は、(二七)電気コーヒー沸器以外に、(三一)その他の調理用電熱器具が候補になります。


(三一)は、「その他の」とあるように、(二七)電気コーヒー沸器や(一六)電気こんろなど、他のすべてに該当しない場合に、今回の製品が該当すると思われる項番です。


ということで、現在までの話をまとめると、以下のようになります。


(一〇)電気火鉢 … 見た目は似ているが、採暖用でないので非該当。

(二九)電気湯せん器 … 原理は似ているが、熱媒体が湯に限定されているので非該当。

(二五)電気保温盆 … 保温できるが、飲食物を沸騰させることができるので非該当。

(二六)電気加温台 … 加温できるが、飲食物を沸騰させることができるので非該当。

(二七)電気コーヒー沸器 … 解釈が明示されていないため不明。要照会。

(一六)電気こんろ … 砂と砂槽が「なべ等を置く置くことのできる台」になるか次第。

(三一)その他の調理用電熱器具 … 上記2品に該当しない場合、ここに該当すると思われるが、これも解釈が明示されていないため、要照会。万が一、ここにも該当しなければPSE対象外。


「電気コーヒー沸器なのか、電気こんろなのかって、どっちでもよくない?どうせどっちも◯PSEの対象なんでしょ?」と思うかも知れませんが、ここの製品名が違えば、届出内容や試験内容が変わることがありますので、電気用品名をはっきりさせる必要があります。

そのため、実務であれば、本件製品の構造や原理等を当局の担当官に説明して、(二七)電気コーヒー沸器や(一六)電気こんろに該当するかを照会することになります。

ただ、今回はあくまで所内教育及びリクルートコラム用に調達した製品であり、実際の案件でもないのに、当局に照会して忙しい担当官のお仕事を邪魔したくないので、照会は行いません。


ということで、今回は輸入したトルココーヒー用のサンドヒーターがPSEの対象となるかどうか、どのような手順で検討するかをご紹介しました。

(実際は、食品衛生法の対象となるか、家庭用品品質表示法の対象となるかなど、他にも様々な法令の検討が必要となりますが、まずは電気用品安全法に絞ってご説明しています。)


次回は、本件製品について実際に、PSEの検査を行ってまいります。引き続き宜しくお願いします。

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