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メイガスの職業病あるある(ラベルのリーガルチェック)

  • 大沢
  • 2 日前
  • 読了時間: 7分

お世話になっております。行政書士法人メイガス国際法務事務所の大沢です。

本記事では就活生の皆様に、弊所で働く職員の文化や癖について紹介します。


製品の表側よりも、裏側が気になる病

家電量販店で新製品を手に取ったとき、普通の人は、まずデザインや機能、価格を確認すると思います。

しかし私含め、弊所の職員は異なります。製品を裏返します。そして、製品の底面や背面に貼られた小さなラベルを見つけると、製造者や輸入者の名称、型式、定格、各種マーク、注意書きなどを読み始めます。これが、弊所における代表的な職業病の一つ、「ラベル・リーガルチェック・シンドローム(製品表示事項審査症候群)」です。


弊所では、電気用品安全法(PSE)や電波法(技適等)を筆頭に、製品の製造・輸入・販売に関係するさまざまな許認可業務を扱っています。

こうした法令の多くは、製品そのものの安全性や性能だけでなく、製品に何を表示しなければならないかについても定めています。

そのため、普段はあまり意識しないと思いますが、製品ラベルは、単なる商品情報が書かれているだけではありません。

「日本でこの製品について責任を負う事業者は誰か」

「どの法令に基づいて、何を確認した製品なのか」

「どの試験機関が関与したのか」

「諸外国の認証も受けているのか」

など、様々な情報が凝縮されています。


そして、我々は仕事で、輸入者・製造者のクライアント様からご相談を頂き、製品ラベルが法定記載事項を満たしているか審査する、リーガルチェックを日々行っています。そのため、習慣として新しい電気製品を見ると、表側に書かれた華やかなキャッチコピーよりも、裏側の小さな文字のほうが気になってしまうのです。

お手持ちのPCやスマホの充電器の細かい表示を見てみて下さい。私たちは、あれをじっくり読んでいます。



「PSEマークがあるから大丈夫」とは限らない

電気用品安全法の対象となる製品には、PSEマークを付ければそれで良し、というわけではありません。電気用品安全法の対象となる製品(電気用品)を輸入販売する場合、PSEマーク以外には基本的に「輸入者名」「原産国」などの表示が必要となりますが、電気用品の種類に応じて、検査機関の名称、絶縁性能、相などの表示も追加で必要となることがあります。


例えばPSE対象の家庭用プロジェクターを輸入販売する場合は、一般的に以下の表示が原則必要になります。(J60335-1及びJ60335-2-56に従う場合)

・定格電圧(V)

・電源の種類記号(単相交流なら"~"、三相交流なら"3~"、中性線付き三相交流なら"3N~"などと決められています)

・定格入力(W)又は定格電流(A)

・交換可能な投影ランプの入力(W)

・ランプの定格電圧(V)

・輸入者名

・モデル名又は形式

・クラスII機器の場合、IEC 60417の記号5172(二重絶縁マーク)

・IPコード(水の浸入に対する保護等級。ただしIPX0は省略できる)

・50 Hz又は60 Hz専用機器は,定格周波数表示

などなど…。


また、ラベルの内容だけでなく、貼る場所についても重要です。「交換可能な投影ランプに関する表示は,ランプの交換中に見えなければならない。」とか「機器上の表示は,機器の外側から,ただし,必要な場合にはカバーを取り外した後,明確に識別できるものでなければならない。可搬形機器の場合,工具を用いずにこのカバーを外したり開けたりすることが可能でなければならない。」などと決められています。


さらに、本体のラベルだけでなく、取扱説明書に表示する内容も決まっています。例えば上記の家庭用プロジェクターなら、「機器の動作中に通気口をふさいではならないこと」「ランプを交換する前に,電源コードを抜くこと」「ランプ又は光学系統の部分に触れる前に機器を冷却すること」などを明記する必要があります。


このように製品の表示には様々な細かい規制があるため、プライベートの買い物中でも、法定記載事項に不備があり、空いているところにPSEマークだけを追加したような製品を見かけると、つい「本当にPSEを理解して販売しているのだろうか…」と心配してしまいます。


「ずいぶんと細かいなあ」と思われたかもしれませんが、実務ではもっと細かく見ます。例えば、上記のプロジェクターを輸入販売するケースにおいて、以下の表示のうち、問題ない表記はどれでしょうか?今回は仮に、100Vから240Vの単相交流で動く仕様と想定します。



①AC 100V~240V


②AC 100V-240V ~


③AC 100V-240V



こちらについて、正解は②です。①は、単相交流を表す"~"という記号を、定格電圧の範囲をあらわす記号のように使ってしまっています。しかし、「定格値に範囲をもち,その範囲全体にわたって調節なしに運転することができる機器には,その幅の下限値と上限値とをハイフン“−”で分けて表示しなければならない。」と定められています。さらに、記載する場所も「電源の種類の記号は,定格電圧表示の次に表示しなければならない」ので、100Vと240Vの間に電源の種類の記号を挿入することはできません。

よって、電圧の範囲には"~"ではなく"-"を使い、"~"は電圧の次に表示している②が正しいのです。


なお、③については原則として不正解です。なぜなら、交流記号がないからです。電源の種類記号を書かねばならないと決められていますが、単相交流の電源の種類記号としては"~"だけが認められており"AC"は認められていないのです。

ということで、正解の選択肢である「②AC 100V-240V ~」の"AC"の部分は、あってもなくてもよい追加の表示だったわけです。なお、ACという追加の表示は必須ではありませんが「誤解を生じない限り,追加の表示があってもよい。」と規定されており、表示することには問題ありません。

そしてさらに補足しますと、「③については原則として不正解です。」と申し上げた理由について、実は「電源が単相2線式のものであって,定格周波数表示がある場合」は、電源の種類記号"~"を省略できるのです。なので、もしこの製品が単相2線式の電源で動くもので、"50Hz/60Hz"などの定格周波数表示があるプロジェクターだった場合は、"~"が省略できるので「③AC 100V-240V」の選択肢も正解となります。


いかがですか。ただ単に「100Vから240Vの単相交流で動く」ということを表示するだけで、こんなに検討すべきことがあるのです。面白くありませんか?面白いですよね?



ラベルだけを見ても、結論は出せない

もっとも、ラベルにPSEマークや表示がないからといって、違法とは断言できません。

同じような外観の製品でも、構造、定格、用途、販売方法などによって、適用される法令や技術基準が変わることがありますので、ラベル上に見慣れたマークがないからといって、直ちに違反製品であるとも限りません。そもそも法令の対象外である場合や、別の方法による表示が認められている場合もあります。

上記写真は日本国内で販売されている電気用品(プラグ変換アダプタ)であるが、

経済産業省の例外承認を受けているため、PSEマークなしで販売可能。


したがって、本来のリーガルチェックでは、

  1. 製品の構造、機能、用途を確認する

  2. 適用される法令を特定する

  3. 法令上の製品区分を判定する

  4. 必要な試験、届出、認証等を確認する

  5. 最後に、表示事項を一つずつ確認する

という順序で検討します。

ただ、製品をチラ見しただけで「どう考えても違反でしょ…」とわかる製品をたまに見かけることがあるのも事実です。そういう製品にあたると、「良い教材になるぞ!」と嬉しくてつい買ってしまいます。あんまり良い癖ではないかも知れません。

(電気用品安全法に違反する商品を輸入販売してはいけませんが、違反商品を我々が購入して使用することは、例外的な場合を除き、違法ではありません。例外的な場合とは、電気工事業者が使用する場合が挙げられます。電気工事業者は、PSEマークのない電気用品を、電気工事に使用してはいけないと電気工事業法で定められています。)




誰かが持ってきた製品が、いつの間にか教材になる職場

メイガスでは、職員が珍しい輸入製品を見つけると、「この表示はどういう整理でしょうか」と所内で話題になることがあります。

海外出張のお土産、インターネットで購入したガジェット、ホテルに備え付けられた電気製品など、教材は日常の至るところにあります。

一人がラベルを見始めると、別の職員が電気用品安全法上の品目を考え、さらに別の職員が電波法や家庭用品品質表示法の適用を検討し始めます。

場合によっては、買った本人がまだ一度も製品を使っていないのに、法令上の検討だけが先に終わります。これはおそらく、一般的な職場ではあまり見られない光景かもしれません。

行政書士法人メイガス国際法務事務所

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