メイガスが扱うお酒の許認可🍾
- 広報担当
- 1 日前
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更新日:13 時間前
弊所ではお酒に関する許認可業務を実施しています。主に担当するのは、大学で酒造を専攻していた醸造科学科出身の職員や、ソムリエ/ワインエキスパート資格を有する職員です。
さて、「お酒の許認可」というと真っ先に思いつくのは、酒税法の酒類製造免許かと思います。酒税法は、醸造酒※1や蒸留酒※2は勿論、梅酒のような浸漬酒※3についてもカバーしており、自家であっても無免許で漬け込んではならない果物等が定められています。そのため、酒造免許を持たないレストランが出す自家製のサングリアは酒税法違反ではないか?という話もよく聞こえてきますね。
※1 醸造酒とは、麦を発酵させたビール、葡萄を発酵させたワイン、米を発酵させた日本酒のように、酵母の発酵によりアルコールをつくったお酒のことです。
※2 蒸留酒とは、麦を発酵させてから蒸留したウイスキー、葡萄を発酵させてから蒸留したブランデー、米を発酵させてから蒸留した米焼酎のように、醸造酒を蒸留することでアルコール度数を高めたお酒のことです。
※3 浸漬酒とは、梅をホワイトリカーに漬け込んだ梅酒や、レモンをウォッカに漬け込んだリモンチェッロなど、果実やハーブなどをアルコールに漬け込んで成分や風味を抽出したお酒のことです。
しかし、弊所では一般的な酒類製造免許に関する申請は扱っておりません。たまに醸造や蒸留ではなく、空気中の二酸化炭素からエタノールを合成する方法で酒造する場合、酒類製造免許が必要か等のニッチなご相談を頂くことがありますが、そのくらいです。
(そもそもそんなことできるのが驚きです。でも実は、国内でも海外でもそのような研究や事業化が行われているのです)
お酒と外為法🍷
さて、では弊所がお酒に関する許認可の対応を行うのはどのようなときか。それは経済制裁・輸出規制関連です。
酒類と経済制裁・輸出規制というと「なんのつながりが?」と思うかも知れませんが、実はロシア・北朝鮮などを仕向地とする酒類の輸出は、「奢侈品規制」により厳しく制限されており、外為法に基づく輸出承認が必要となることがあります。
奢侈品(しゃしひん)とは、贅沢品のことです。政権幹部や指導者層等への圧力として、ワイン・シャンパンだけでなく、腕時計や香粧品、高級車、ジュエリー、グランドピアノなど様々な高級品が奢侈品規制の対象となっています。
ちなみに前記の国々に対しては一律に全てのお酒が輸出できなくなるわけではありません。北朝鮮はたしかに輸出禁止ですが、ロシアに関しては、北朝鮮と違って、4万円を超えるものだけが禁止されています。
ここでいう4万円は「1単位当たりの金額」です。「商品を構成する最小単位となる箱やパッケージ、その他これらに相当するものが「1単位当たり」となるとされています。よって、例えばワインを1本ずつ販売する場合は1本あたり4万円以下か、1箱単位で販売する場合は1箱あたりが4万円以下かを検討する必要があります。
(1本3万9千円のお酒を1本単位で売るならロシア向けの奢侈品規制には引っかからないわけですが、1本3万9千円って相当良いお酒ですよね)
左:ロシア向けのアルコール輸出を規制する輸出令別表第2の3三号イ
右:輸出令別表第2の3三号イの内容を定める省令
上の画像の右側では、HSコードでいうとどのような酒類がロシア向け輸出規制の対象となるかが示されています。ざっくりまとめると以下のとおりですが、ほぼすべての飲用の酒類が規制対象となっています。(バッグインボックスで輸出する場合など、若干の例外がありますので、実際に輸出を検討する際は法令原文でお調べ下さい)
22.03:ビール
22.04:ワイン
22.05:ベルモット(生鮮のぶどうから製造したもので、植物又は芳香性物質により香味を付けたもの)
22.06:上記以外の醸造酒(シードル、ミード、日本酒等が含まれるが、これに限られない)
2207.10:エタノール
22.08:その他のアルコール飲料(グラッパ、マール、ラム、ウイスキー、ジン、ウォッカ、リキュール、フルーツブランデー等が含まれるが、これに限られない)
反対に、ロシアから酒類を輸入することも、外為法による規制(輸入禁止)の対象となります。ロシア制裁以降、東京都内の有名ロシア料理店でもロシアワインやソビエトシャンパンが出てこなくなりましたが、この影響も大きいのかもしれませんね。
戦前のワインの輸出規制⚓️
余談ですが、昔はワインが「奢侈品」としてではなく「戦略物資」として、輸出規制の対象となっていたこともあります。
上記画像はイギリス王室が1917年5月10日付で発したRoyal Proclamation(勅令)です。これによると、ワインをイギリスからロシア等の一部の国へ輸出する際は、War Trade Department(戦争貿易省、現存せず)の許可を必要とするとされています。
なぜワインがこのような輸出規制の対象となっているかというと、ワインそのものというより、ワインの副産物の酒石酸や、その精製物のロッシェル塩が戦略物資として扱われていたためです。
ロッシェル塩(酒石酸カリウムナトリウム)は、ワインの製造過程で生じる「酒石酸」を精製して作られる物質で、ソナーの圧電素子として使われていました。圧電素子とは、圧力を加えると電圧が発生し(圧電効果)、逆に電圧を加えると変形する(逆圧電効果)性質を持つ電子部品のことです。
圧電素子がソナーに用いられる理由は、音波を出すときは圧電素子に電圧を加えて振動させて音波を作り、音波を受信するときは音波を受けた振動を電圧に変換するためです。
ちなみに、戦前の日本もロッシェル塩の輸出を規制していたのではないかと思い、昭和12年の「輸出入品等ニ関スル臨時措置ニ関スル法律」や、昭和16年の「貿易統制令」などの法令も調べてみたのですが、ロッシェル塩の輸出規制に関する情報は見つけられませんでした。
そもそも、戦前の日本はロッシェル塩を輸出する側ではなく輸入する側だったようです。国税庁の租税史料では、ロッシェル塩の原料である酒石酸加里の国産化は難航し、戦前は全て輸入に頼っていたと説明されています。そして、日米開戦後の昭和17年、山梨県のサドヤが葡萄酒の搾りかすから酒石酸加里を抽出することに成功した、という流れです。
そのため、当時の日本にはそもそも輸出規制をかけなければならないほどの具体的な立法事実※4が存在しなかったのかも知れません。
※4 立法事実とは、「こういった法律を作る必要性・合理性がある」と言えるような事実のことです。
なお、ロッシェル塩は湿度が高い環境だと溶解してしまったり、衝撃や振動で結晶が壊れてしまったりするため、チタン化合物やセラミック化合物等に置き換えられ、現在は軍用ソナーとしては使用されなくなりました。よって、現在では軍需品・戦略物資としてワインが規制されることはありません。
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