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獣医の先生から動物検疫の教育を受けました

  • 水澤
  • 5月12日
  • 読了時間: 5分

弊所は通商規制・貿易法務に関する許認可を重点的に取り扱っておりますが、メインは防衛装備品を含む工業製品で、動物生体の許認可を取り扱うことは多くはありません。


とはいえ、これまでにも医科大学や製薬会社、バイオベンチャー企業の方からのご依頼で、実験動物や、研究用の血液などを輸出する際の許認可対応を行ったことも何度もありました。

そのため、獣医師と行政書士のライセンスをもつ吉田昌則先生から、バイオ系の法務を担当する弊所職員に対して、動物検疫はどのような方法で実施されているのかといった実務や、家畜伝染病予防法などの法令の運用等についてご説明を頂きました。


ご講話の様子
ご講話の様子

ちなみに、今回ご講話をいただいた吉田先生は、以前弊所が見学させていただいた先端医療センターAdAMに勤務されていらっしゃるため、何度もお世話になっております。


今回の講話では、家畜伝染予防法の解説や、伝染病、検疫においての生体と畜産物の対応や注意点の違い、日本から輸出する際の対応、狂犬病やレプトスピラ症の詳細や実態等の様々な内容を、獣医師としてのご経験や実状の温度感を交えてお話してくださいました。



以下に、今回の講話で印象的だった点や、勉強になった点など、びっくりしたポイントをご紹介します。


びっくりポイントその1:口蹄疫

動物が感染する伝染病には多くの種類がありますが、家畜伝染予防法に定められている家畜伝染病のひとつに「口蹄疫(こうていえき)」というものがあります。この口蹄疫が感染を起こす対象としては牛、めん羊、山羊、豚等がありますが、空気感染を起こす口蹄疫ウイルスというものが原因とのことでした。


口蹄疫ウイルスとは、ピコルナウイルス科アフトウイルス属に属する約21〜25 nm程度の非常に小さなウイルスです。1 nmは1 mmの100万分の1の大きさであり、飛沫感染を起こすインフルエンザウイルスなどは約100 nm(0.1 μm)ですが、このさらに100分の1のサイズということです。


このサイズの何が問題かというと、インフルエンザウイルスの大きさであれば、不織布マスクである程度予防できますが、口蹄疫ウイルスの大きさでは不織布マスクはもはや無意味となり、空気感染してしまうのです。マスクで防げないとなると、どれだけ感染威力が強いかをご想像していただけるかと思います。


感染力が非常に強いため、一度発生すると封じ込めが非常に困難であり、家畜産業に大きな打撃が与えられます。インフルエンザウイルスにA型、B型があるように、口蹄疫ウイルスにも複数の変異株が存在しますが、株ごとに有効なワクチンが異なるため、事前の完全な予防も難しいです。


しかしながら、幸いなことに口蹄疫は現在日本で確認されておりません(過去にはありました)。日本のおいしい牛さんや豚さんには影響が及んでいないと聞いて、一安心でした。



びっくりポイントその2:牛海綿状脳症(BSE)

狂牛病、プリオン病とも言われ、ご存じの方も多い病気かと思います。私も本講話の受講前からなんとなくは知っていたのですが、実態や事例を伺い驚きの連続でした。

そもそも牛海綿状脳症(BSE)とは、BSEプリオンと呼ばれる病原体に牛が感染した場合、牛の脳の組織がスポンジ状になり、異常行動、運動失調などを示し、死亡するとされている牛の病気の一つです。感染原因として、牛海綿状脳症感染済みの牛の肉骨粉等を原料としたえさを他の牛に与えたことにより、この感染症が広まったと考えられていますが、本来草食動物である牛に肉食(しかも同種の肉)をさせたことによる影響は大きなものであったと言えます。

そのため、日本での輸入検疫においては骨粉・肉粉・肉骨粉等は、動物検疫所における輸入検疫証明書の発行を停止されています。

ちなみに、牛海綿状脳症に感染済みの牛の肉骨粉等を食べることによって、人やネコに感染した事例があります。ウイルスや菌ではなく、プリオン(タンパク質)の経口摂取によって種の壁を越えて感染するということに驚きました。タンパク質を消化できてるはずなのに…。



びっくりポイントその3:レプトスピラ症

届出伝染病の一種であるレプトスピラ症はネズミ等の齧歯類の尿から発生し、犬や人に感染をする人獣共通の感染病です。レプトスピラ症の存在をこの講話で初めて知ったのですが、獣医の方にとっては狂犬病と同じくらいメジャーな感染症であり、犬を飼う場合はワクチンの接種が必要とのことです。犬が日本から出国する場合、動物検疫所にて出国前に狂犬病とレプトスピラ症の検査及び輸出検疫証明書の交付を受ける必要があります。

特に驚いたのは地域性があり、東日本と西日本ではこの病気への警戒感も異なるということでした。風土病というか、そういった地域差もあるのですね。


職員の感想


「海外旅行に行った際、ビーフジャーキーなどの肉類の持ち込みが規制されていますが、動物を生体として持ち込むわけではないのに、なぜ禁止か分かっていませんでした。今回の教育を受けて、どのような検査が必要で、検疫はどのような病気を見て、どのような事態を警戒しているのかよくわかりました。」


「印象的だったのは、狂犬病は神経を通って脳や脊髄を破壊することによって死亡するという恐ろしさです。ただ、発症が遅いため、狂犬病を発症している犬に嚙まれたとしても、その後にワクチンを打つことで対応ができるという点は驚きでした。噛まれたら直ちに皆が死んでしまうのかと思っていました。ただ、狂犬病のウイルスは一日何ミリといった単位で進んでいくということを知って、感染して症状が進行していくのは怖いだろうなと思いました。」


「狂犬病の清浄化に成功している国の少なさに驚いた(清浄化に成功しているのは日本、オーストラリア等の島国か、スウェーデン等の半島のみ)。検疫という視点から見た島国のありがたみを感じた。」


「牛海綿状脳症(BSE)が牛人感染するのが怖い。その内容を獣医の方から聞くのはより臨場感があった。近くに脳を食べるのが好きな人がいなくて安心した。」


「弊所でも研究目的で、人のうんちを中国に輸出する許認可をやったことがあるため、改めて貿易管理業務の幅広さと奥深さを学びました。」


 ↑「もう『中国に行って現地でうんこしてくれよ』って思ったね」


左:弊所の大沢 右:ご講話を頂いた吉田先生
左:弊所の大沢 右:ご講話を頂いた吉田先生

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