私は、炭酸が飲めない、アルコール特有の風味が苦手、お酒を飲むと体調が悪くなりやすいという三重苦により、醸造科学科出身で、酒類に関する学問を大学で専攻し、研究室でワインや焼酎を造っていたにも関わらず、飲酒への苦手意識が強くありました。
飲めるとしても甘くて度数の低いリキュールカクテルの一部のみだった中で、お酒に関する悩みを軽く話したところ、弊所所長がデザートワインの存在を教えてくれました。
ワインはブドウを原料とし、ブドウ中に含まれる糖を酵母によりアルコール発酵することにより生成される非常にシンプルな酒類であると言えます。ブドウ中の糖はアルコール発酵により消費されるため、理論上は発酵を進めるほど、液中の糖は減り、甘みの少ない溶液が生成されます。そのため、甘口ワインを飲んだことのない私には、ワインに甘みがあるという状態はあまり想像がつかないというか、実感がわきませんでした。もちろん、知識としては強く絞った方が渋みがでて、優しく絞った方が甘みが出るとは知ってはいますが、それでもデザートのように甘いワインは想像もつきませんでした。
そんな中、弊所所長が所内交流会にお気に入りのデザートワインを持ってきてくれました。
こちらのお酒は本当に美味しく、甘く、悪酔いもせず、アルコールの苦手な風味もなく、最高のワインでした。もちろん、ただシロップのように甘いだけでなく、酸味も調和して、止まらなくなるお酒をはじめて知りました。
私だけでなく、普段お酒をほとんど飲まない上司もその味に感動して何杯も飲んでしまい、上司と付き合いの長い所長も「君がそんなにお酒飲んでるのはじめてみた」と驚くほどでした。
所内交流会で飲んで虜になった南アフリカのデザートワイン、ヴァン・ド・コンスタンス。セントヘレナ島へ亡命後のナポレオンが、毎日1瓶飲んでいたそうです。流石に飲み過ぎだけど気持ちはわかる。
そして、後日、所長が馴染みのワインインポーターの方をお招きし、接待用に事務所に備え置くワインを選ぶための試飲会&勉強会が弊所東京本部で開催されましたので、喜んで参加しました。
事務所でワインの試飲業務なんて驚きですが、海外の弁護士や、外部協力者の方を接遇する際にお出しするワインを選ぶための重要なイベントということで、真剣さ半分、楽しさ半分です。
試飲会と勉強会を兼ねているので、飲み比べるだけではなく、たくさん資料を拝見し、ワインの等級や格付けについても教わります。大学でワイン造りを経験したといっても、こうした内容はあまり教わらなかったので、新鮮で面白かったです。
どういうお客様がどういうワインを好むか、メモしながら説明をお伺いします
産地もぶどう品種も様々なワインを持ってきて頂けて、一つ一つ丁寧に試飲できたことで、ワインが苦手な人でもそれぞれの違いがよくわかりました。また、ポートワインのような酒精強化ワインや、ノーベル賞の晩餐会でサーブされたワイン、フラッグシップキャリアのファーストクラスで採用されているワイン、コニャックで割ったワインなど、様々な種類を知ることができました。
また、ワインインポーターの方にお越し頂くだけでなく、こちらからワイナリーにお伺いして勉強させて頂く機会もありました。
お伺いした国内のワイナリー
ここからはワインについて気になることを、所長の大沢に色々と聞いてみました。
水澤:接遇でワインをお出しする際、どのような基準で選んでいるのですか?
大沢:もてなす相手や状況によって、色々と考えることがあります。簡単なところでは、甘党の人をもてなすときはデザートワインを選ぶし、海外の人のホームパーティに招待された時は自己紹介にも繋げやすいように国産ワインや地元のワインを選びます。お国自慢じゃないですが、やっぱり自国のワインを褒められると嬉しいですし、話のきっかけにもなりますからね。
あと、ワインに限らず、日本酒や梅酒を出すこともあります。梅酒は本当に海外の方にも人気ですね。
水澤:好みではない辛口のワインも購入、所有しているのは接遇のためですか?
大沢:そうです。相手の好みがありますからね。私の好みはデザートワインなんですけど、そもそもデザートワインを苦手とされる方も多いです。また、デザートワインがあまり合うとは思えない料理も多いですね。わかりやすいところでは、ステーキにはフルボディの赤とかね。そういうペアリングもありますから、自分好みのワインだけ並べる、というわけにはいきません。
水澤:デザートワインに合う、おすすめの食べ物はありますか?
大沢:平凡ですが、デザートワインはブルーチーズとかと相性がいいですね。例えばピザパーティーならクアトロフォルマッジに蜂蜜をかけて食べる時は甘いデザートワイン,いいと思います。あとはこれもオーソドックスですが、メロンにかけるのも最高ですね。
Q:接遇でワインを選ぶとなると、安いものは選びにくそうですね。
A:いやいや。そもそも接遇とは、値段ではなく心遣いですから。たくさんお金を使えば良いおもてなしができるかといえば、そんなことはないんですね。
私が出張で、外国のとあるホテルに泊まったときのことをお話します。そのホテルに泊まるのは2回目だったんですね。1回目がコロナ前の2019年、2回目がコロナ明けの2022年だったかな。その2回目の宿泊時に、"また戻ってきてくれてありがとう"という丁寧な直筆のお手紙と共に、始めて泊まった年にちなんだ、2019年のワインをサービスで部屋において頂けたんです。
ワイン自体の値段はいわゆる高級ワインではなく、どちらかというとお手頃な価格帯のものですが(そもそも、好意で用意して頂いたものの値段を考えるのは失礼ですが)、値段よりその心遣いや、久しぶりの再訪を歓迎されているという気持ちが嬉しかったものです。
あと、なんであっても高いものはすべて良いとか、高いものは美味しいとかは一概に言えませんが、ワインもご多分に漏れません。値段が高いから美味しい、安いからまずいというわけではないのです。
出張先のホテルのお部屋に用意されていたお手紙とワイン
水澤:じゃあ、超有名な高級ワインばかり揃えてお金が飛んでいく、なんてことは意外とないんですね!
大沢:そうです。銘柄自体はお手頃なものでも、当たり年で揃えたりとか、おもてなしのために色々とできることはあります。
水澤:なるほどです。ワインの選び方一つとっても、色々と考えることがあるんですね!勉強になりました。