弊所では、法務事務所にしては珍しく、電波法・電安法対応のためのEMC試験の実施など、電磁波に関するお仕事がたくさんあります。
今回は、弊所が行うEMI測定を見学してきましたので、そちらをご紹介します。
まず、EMI測定は、電波法や電気用品安全法(電安法・PSE)で求められている電磁波に関する試験です。
EMI測定では、①伝導妨害波(雑音端子電圧)測定、②妨害電力測定、③放射エミッション測定を行う必要があります。
①伝導妨害波測定と②妨害電力測定では、電気製品・電子機器の動作時に、機器内部で発生し、電源ケーブルや信号ケーブルを伝わって外部へと漏洩する電磁ノイズを測定します。
③放射エミッション測定では、電気製品・電子機器から空間に放射される電磁ノイズを測定します。
左:①で使用する疑似電源回路網
中:②で使用する吸収クランプとクランプ走行装置
右:③で使用するラージループアンテナ
①~③のような試験は、EMIシールドルームや、電波暗室といった特別な部屋で行っています。
EMIシールドルームとは、電磁波の有害な影響(電磁波干渉)から電子機器やシステムを保護するために、電磁波を遮断する機能を備えた部屋です。EMIシールドルームは、導電性の材料で覆われているため、電波が反射され、室外からの電磁波を遮断します。また、室内の電磁波も外に出ていきません。
弊所で利用する電波暗室。天井や壁もすべて電波吸収体で覆われています。
金庫のように分厚い扉もすごいですね。
電波暗室やEMIシールドルームにクライアント様の商品を搬入する際は、
クライアント様の手配されたトラックが直接横付けし、ハンドリフターなどを用いて運び込みます。
電気通信主任技術者、電気主任技術者、電気工事士、工事担任者、無線従事者など、関係国家資格を持つ弊所職員が、こういった特殊なお部屋でクライアント様・顧問先企業様の商品に対して電波法や電気用品安全法の試験を行い、安全性を確認しています。
EMIシールドルームや電波暗室の隣の事務室で、すぐに測定結果を確認できます
測定結果に問題があり、法令の基準を満たさない場合、どのような改修をすればよいか(小さなEMIコアで事足りるか、どのようなフィルターが必要か等)を検討し、現地で簡単な改修を実際に行った上で再試験をし、クライアント様に適切な改修方法を提案します。
左:現場での簡易改修のための作業台
中:EMIコアのサンプル
右:現地で弊所職員が手作りした試験用の簡易フィルター
新人職員:電波暗室なんて初めて聞きましたし、初めて入りました!それに、EMI測定って大変なんですね!測って合否がわかれば終わりじゃなくて、どうしたら合格するかまで考えているのが、お客様思いだなと思いました。
大澤代表:でも、そこがなかなか難しいんですよね~、完全に技術的な問題ですから。クライアント様のエンジニアの方が現場にいらっしゃれば、一緒に頭を悩ませながら現場で改造していきます。
新人職員:法務事務所と言っても、メイガスの場合は文系の勉強だけじゃなく理系の勉強もがっつりしないといけないですね。
大澤代表:そうですね。うちでは法技一系化と称して、法律職と技術職をわけずに採用して、文系出身者にも理系教育を行いますし、理系出身者にも文系教育を行いますから。
法学部卒だから法律だけとか、情報学部卒だからITだけということではなく、文理問わず勉強しないといけません。
実際に、上記のEMI測定作業も、エンジニアではなく、電気工事士・電気主任技術者・無線従事者の資格をもった特定行政書士が実施しています。法と技術を両方見ているから、ワンストップで電波法・電安法のご相談に応じられるわけです。
新人職員:物理の中でも特に電気とか電磁波とかは苦手だったので、できるようになるか不安です・・・。
大澤代表:大丈夫でしょう。所内教育の【電気法務】、【電波法】、【無線工学】、【通信工学】、【電磁気学】、【電子工学】とかを受けて、頑張って勉強しましょう。電気電子関係だけで20科目くらいの所内教育があるので、全部受けたらその辺の国家試験くらいすぐ受かるくらい詳しくなれますよ。まあ、20科目って大学の丸1年分の単位みたいなものですからね、それなりに大変ですけれど
新人職員:頑張ります…。EMI測定の経験や、電磁波の知識は他の業務でも役に立ちますか?
大澤代表:まぁ、たまには。例えば外為法では電波吸収剤(ステルス塗料など)が規制されており、輸出には制限があります。
クライアント様が電波吸収剤の研究をはじめられた際は、当該研究成果の外国への提供や、外国企業との共同研究が外為法の規制に引っかからないか相談を頂いたわけですが、その際もこのような経験・知見があると話が少しはスムーズに進められます。
新人職員:すみません、ステルスっていうのは、確かレーダーに映らないやつでしたっけ?電波が吸収されて返ってこないからレーダーに映らない、的な・・・。
大澤代表:まあ、そんな感じです。あまり難しくならない程度に、もう少しだけ正確に言うと、低RCSの技術ですね。レーダーから空中に発射された電波は、空を飛んでいる飛行機に当たると反射されて返ってきて、それで「飛行機がいるぞ!」とわかるわけですね。その反射具合がRCSです。つまり、RCSを低減するためには、電波を吸収したり、全然レーダーとは関係ない方向に反射しちゃえばいいわけです。
で、こういう試験も電波暗室で行います。最近ではIED(手作り爆弾)の探知技術の開発でも、電波暗室を使いますね。
ということで、電波暗室での電波法対応の経験が、外為法対応で役立つこともあるわけです。何事も勉強ですね。
新人職員:なんとかわかりました!これからいっぱい勉強します!
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