所内教育紹介 (航空・宇宙)
- 某職員
- 2024年10月19日
- 読了時間: 6分
更新日:7月6日
弊所のクライアント・顧問先企業様の中には、航空宇宙関係の企業・団体の方も多くいらっしゃいます。例えば、空港や宇宙港、航空機商社、無人航空機メーカー、航空装備品メーカー、衛星通信事業者、宇宙関係企業等から、外為法を中心に様々な許認可のご相談を頂いております。
しかし、航空宇宙関係の案件を処理するには、一般的な法令の知識だけでなく、航空宇宙関係の最低限の知識が必要です。例えば、軍用機に搭載するレーダーを輸出したり、SAR解析で得られた情報等を海外に提供する際などは、外為法対応を検討する必要がありますが、航空宇宙関係の知識がないと対応が難しくなります。
そのため、弊所では航空宇宙関係の所内教育にも力をいれております。本記事では、航空宇宙に関する弊所の所内教育をご紹介致します。
(ご参考)弊所が提供している航空・宇宙に関する法務サービスの紹介ページはこちら
① 所内での座学
弊所では、航空宇宙関係の技術系教育と法律系教育を職員向けに実施しています。
技術系教育科目の一例:『航空工学』『航空力学』『空気力学』『宇宙科学』『宇宙工学』『航空気象』等
法律系教育科目の一例:『外為法(航空・宇宙分野)』『衛星リモートセンシング法』『宇宙活動法』『航空法』『航空機製造事業法』『ワルソー条約』等
使用する教材も多く、航空工学講座シリーズなどの書籍で勉強していきます。技術系の所内教育で使用する教材だけでも10冊以上あります。法律系の所内教育で使用する教材はもっと多いです。
所内教育で使用する教材類
左:航空宇宙関係の書籍 (航空工学講座シリーズなど)
中:FAA等が発行する資料 (本資料はPilot's Handbook of Aeronautical Knowledge FAA-H-8083-258)
右:航空宇宙関係の論文 (本論文は防衛装備庁が保有する風洞装置に関するもの)
また、弊所にはJAXAで技術職として勤務していたオブカウンセルの職員がおりますので、IMU(慣性航法装置)やジャイロなどについて、所内で教育・説明を行ってもらうこともあります。また、同職員はCISTECの航法専門委員会の委員長も務められていたため、技術だけでなく法律の面からも航空宇宙に関する教育を実施して頂けています。
② 外部での座学
所内での座学により最低限な技術・法律の知識を得たら、航空宇宙に関する外部の講演会・勉強会・説明会等に出席し、知見を深めていきます。
例えば、経済産業省による航空機産業戦略に関する講演会や、内閣府による宇宙政策に関する講演会、防衛装備庁の航空機エンジン研究開発に関する講演会等に参加し、勉強させて頂いています。
左:NEDOによる衛星コンステレーションに関する説明
右:日本宇宙安全保障研究所による宇宙安全保障構想に関する説明
また、一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)での研修に参加し、合成開口レーダー(SAR)の原理と種類を座学形式で教わったり、SAR画像処理を実習形式で学んだりもしています。
左:Pi-SARのアンテナポッド
右:Pi-SARで撮影された航空自衛隊府中基地周辺のSAR画像
珍しいところでは、航空自衛隊の宇宙作戦群へ部隊研修でお伺いし、宇宙状況把握の現状や課題についてご説明頂いたことがあります。その際は宇宙作戦群の講堂で拝聴したのですが、宇宙作戦群の庁舎に入れるのは大変めずらしいということで、とても貴重な機会を頂きました。
③ 見学・実習
部内外の座学で基礎的な知識を得たら、次は見学・実習を通して、実際のところを学んでいきます。
弊所では航空自衛隊やJAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)などの施設を外部研修として訪問したり、航空宇宙関係の展示会を見学したり、無人航空機の労働安全を研究している大学教授のワークショップに参加したりと、外部を訪問し、研究者や、パイロット等の実務者の方から直接お話をお伺いしています。
左:H3ロケットの説明
中:はやぶさ2の模型
右:宇宙探査用地上局の模型
左上:防衛装備庁の無人機研究システム
右上:旅客機用の大型エンジン
左下:グローバル戦闘航空プログラムの説明
右下:航空自衛官の方からVR体験をさせて頂いている弊所職員
左:部隊研修で訪問した航空自衛隊府中基地
右:部隊研修で訪問した航空自衛隊入間基地
NICT(国立研究開発法人 情報通信研究機構)が開発した空港滑走路監視システム
(空港滑走路上の3cm程度の異物を30秒以内に検出する技術)
④ 継続教育・資格取得支援
このように、弊所では職員が業務を安心して進められるように、所内教育を大事にしています。しかし、所内教育は一度受けて終わりではなく、その後も業界紙や論文等を読み、技術動向を追い続けることが大事です。

左右は防衛技術協会が発行する専門誌『防衛技術ジャーナル』、中央は航空技術教会が発行する専門誌『航空技術』
いずれも弊所で購読しており、自学研鑽が推奨されている。
ただ、そうはいってもなかなか時間に余裕がなく、継続的な学習が難しいのも現実です。そのため、弊所では指定された航空宇宙関係の資格を取得したり、指定された航空宇宙関係の研修に参加した職員に対して、教育手当を支給することで、所内教育を修了して終わりにならないよう、教育後の自主的・継続的なフォローアップを促しています。
所内教育受講者の感想
職員A「TCASやEICASなど、アビオニクス関係を輸出するときは、しっかり体系的に勉強した上での知識がないと安心して該非判定(輸出規制対象貨物に該当するか否かの判定)ができないので、所内教育のおかげで安心して業務に取り組めます。また、最近担当させて頂いている顧問先企業様が、航空機の輸入販売をはじめられるので、法令関係の教育は非常に役に立ちました。」
職員B「担当させて頂いている顧問先企業様に、無人航空機メーカーがいらっしゃるので、航空関係の知識を広く浅く学ぶことができて良かったです。また、『なぜ送信出力制御機能や位相偏移変調機能を有する電波高度計が輸出規制の対象になるか』、『そもそも慣性航法装置やリングレーザージャイロはどういった原理でうごくのか』、『スクラムジェットエンジンは輸出規制の対象とされることがあるが、そもそも航空用エンジンはどのような種類があって、それぞれどのような構造なのか』等、本当に基礎から教えてもらえたので、航空関係の予備知識がなくてもよくわかりました。」
職員C「見学実習では、人生で初めて航空自衛隊の輸送機に搭乗したり、現役パイロットの方にコックピットを案内してもらえたりできて、とても楽しく勉強できました。あと、全然関係ないのですが、顧問先企業様からご招待頂いて航空・宇宙分野の展示会を訪問したときに、航空自衛隊のブースに立ち寄ると1等空佐の方が弊所の所長に『大澤さん!お久しぶりです!』と話しかけていて、所長の顔が広いなと思いました。」
職員D「ちょうどこれから風洞を輸出する案件にアサインされるのですが、乱流や層流といった流体力学の基礎的な概念から、レイノルズ数やナビエ - ストークス方程式などの専門的な話まで教えてもらえて、難しいですが安心して新しい案件に取り組めると思いました。」