弊所のクライアント・顧問先企業様の中には、航空宇宙関係の企業・団体の方も多くいらっしゃいます。例えば、空港や宇宙港、航空機商社、無人航空機メーカー、航空装備品メーカー、衛星通信事業者、宇宙関係企業等から、外為法を中心に様々な許認可のご相談を頂いております。
しかし、航空宇宙関係の案件を処理するには、一般的な法令の知識だけでなく、航空宇宙関係の最低限の知識が必要です。例えば、軍用機に搭載するレーダーを輸出したり、SAR解析で得られた情報等を海外に提供する際などは、外為法対応を検討する必要がありますが、航空宇宙関係の知識がないと対応が難しくなります。
そのため、弊所では航空宇宙関係の所内教育にも力をいれております。本記事では、航空宇宙に関する弊所の所内教育をご紹介致します。
(ご参考)弊所が提供している航空・宇宙に関する法務サービスの紹介ページはこちら
① 所内での座学
弊所では、航空宇宙関係の技術系教育と法律系教育を職員向けに実施しています。
技術系教育科目の一例:『航空工学』『航空力学』『空気力学』『宇宙科学』『宇宙工学』『航空気象』等
法律系教育科目の一例:『衛星リモートセンシング法』『宇宙活動法』『航空法』『航空機製造事業法』『ワルソー条約』等
使用する教材も多く、航空工学講座シリーズなどの書籍で勉強していきます。技術系の所内教育で使用する教材だけでも10冊以上あります。法律系の所内教育で使用する教材はもっと多いです。
所内教育で使用する教材類
左:航空宇宙関係の書籍 (航空工学講座シリーズなど)
中:FAA等が発行する資料 (本資料はPilot's Handbook of Aeronautical Knowledge FAA-H-8083-258)
右:航空宇宙関係の論文 (本論文は防衛装備庁が保有する風洞装置に関するもの)
また、弊所にはJAXAで技術職として勤務していたオブカウンセルの職員がおりますので、IMU(慣性航法装置)やジャイロなどについて、所内で教育・説明を行ってもらうこともあります。また、同職員はCISTECの航法専門委員会の委員長も務められていたため、技術だけでなく法律の面からも航空宇宙に関する教育を実施して頂けています。
② 外部での座学
所内での座学により最低限な技術・法律の知識を得たら、航空宇宙に関する外部の講演会・勉強会・説明会等に出席し、知見を深めていきます。
例えば、経済産業省による航空機産業戦略に関する講演会や、内閣府による宇宙政策に関する講演会、防衛装備庁の航空機エンジン研究開発に関する講演会等に参加し、勉強させて頂いています。
左:NEDOによる衛星コンステレーションに関する説明
右:日本宇宙安全保障研究所による宇宙安全保障構想に関する説明
また、一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)での研修に参加し、合成開口レーダー(SAR)の原理と種類を座学形式で教わったり、SAR画像処理を実習形式で学んだりもしています。
珍しいところでは、航空自衛隊の宇宙作戦群へ部隊研修でお伺いし、宇宙状況把握の現状や課題についてご説明頂いたことがあります。その際は宇宙作戦群の講堂で拝聴したのですが、宇宙作戦群の庁舎に入れるのは大変めずらしいということで、とても貴重な機会を頂きました。
③ 見学・実習
部内外の座学で基礎的な知識を得たら、次は見学・実習を通して、実際のところを学んでいきます。
弊所では航空自衛隊やJAXAの施設を外部研修として訪問したり(航空自衛隊基地での外部研修の様子は後日別記事のコラムで掲載予定です)、航空宇宙関係の展示会を見学したり、無人航空機の労働安全を研究している大学教授のワークショップに参加したりと、外部を訪問し、実務者・研究者の方から直接お話をお伺いしています。
左:H3ロケットの説明
中:はやぶさ2の模型
右:宇宙探査用地上局の模型
左上:防衛装備庁の無人機研究システム
右上:旅客機用の大型エンジン
左下:グローバル戦闘航空プログラムの説明
右下:航空自衛官の方からVR体験をさせて頂いている弊所職員
このように、弊所では職員が業務を安心して進められるように、所内教育を大事にしています。
また、所内教育は一度受けて終わりではなく、その後も業界紙や論文等を読み、技術動向を追い続けることが大事です。

左右は防衛技術協会が発行する専門誌『防衛技術ジャーナル』、中央は航空技術教会が発行する専門誌『航空技術』
いずれも弊所で購読しており、自学研鑽が推奨されている。
しかし、なかなか時間に余裕がなく、継続的な学習が難しいのも現実です。そのため、弊所では指定された航空宇宙関係の資格を取得したり、指定された航空宇宙関係の研修に参加した職員に対して、教育手当を支給することで、所内教育を修了して終わりにならないよう、教育後の自主的・継続的なフォローアップを促しています。
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