行政書士のキャリアとしては、独立開業か事務所勤務を選ぶことができます。今回は独立開業と事務所勤務の比較について、弊所代表の大沢に話を聞いてみました。
職員:独立開業と事務所勤務ってどっちがおすすめですか?
大沢:身も蓋もないですが、どちらかがおすすめとかはなく、人によって向き不向きや好みがあるので、どっちがいいかは人によります。
仕事以外のライフイベントでたくさんやるべきことがあるなら大規模な行政書士法人勤務がいいでしょうし、仕事に打ち込みたいとか専門性を磨きたいならブティック系の事務所が良いかも知れませんし、完全に自分だけのペースや自分の責任で仕事したいなら独立開業がいいでしょうし、人の数だけ正解があるのではないでしょうか。
職員:行政書士って、独立開業してお客さん来るんですか?
大沢:そこは行政書士としての実務能力じゃなくて、個人事業主としての経営能力次第ですね。まあ、行政書士に限らず、自営業はどんな業種でもそういうものだと思いますよ。画家でもパティシエでも歯科医でも。良くも悪くも。
職員:使用人行政書士※のメリットはなんでしょうか?やっぱりお給料が安定してもらえるとか、自分で経営責任とらなくていいとか、自分でお客さんを捕まえなくて良さそうとかは思いつくんですけれど…。
※ 独立開業せず、行政書士事務所や行政書士法人に雇用されて勤務する行政書士のこと
大沢:あとは、必要な専門書があれば事務所が買ってくれるとか、高額なリーガルテックのサービスも事務所が契約してくれるとかも大事なポイントかも。これ自己負担だと馬鹿にならない値段しますから。うちでも米国の経済制裁の専門書をアメリカの本屋さんから取り寄せたりするんですが、一冊5万円とか平気でしますからね。
職員:それは独立開業だとめっちゃきついですね!
大沢:顧問先企業様からITAR(国際武器取引規則)と経済制裁のご相談を頂いた際に、勉強のために買おうと思ったらすごい値段だったので、別に経費を請求するわけでもないのにカウンターパートの方に見せて、「見てくださいこれ!めっちゃ高いんですよ!これ御社のために今買って勉強しますからね!」とめちゃくちゃ恩着せがましいアピールをしてしまいました。「高っ!」という驚きを共有したくて。
職員:カウンターパートの方と仲良いですよねほんと(笑)
大沢:カウンターパートの皆様が優しいおかげです(笑)。さて、事務所勤務のメリットに話を戻しますと、お金の問題も重要ですが、事務所の先輩とかから仕事を教われるということが一番大事だと思います。独立開業だとなかなか相談する相手もいないですしね。
東京都行政書士会も、行政書士のための業務相談とかやってくれていますけど、それも日々の仕事を手取り足取り教えてくれるわけじゃないですから、やっぱり事務所勤務で修行するというのは、将来的に独立したい人も経験した方が良いと思います。過誤防止のためにも。
あと、直接的な業務のことだけじゃなくて、PCスキルとか、英会話とかも教えてくれるファームはとてもいいですよね。
職員:結構どの事務所もちゃんと教育してくれるものですか?
大沢:まあ、そこは事務所によりますね。「何も教えないが絶対に何も間違えるな」っていうスタンスの、硬派というか古風というか、そういうスタイルの事務所もあります(笑)。教育に力をいれてる私が言うとポジショントークになってしまいますが、新人の方は即独より、やっぱりちゃんと教育体系が整っていて、面倒見が良い人が教えてくれる事務所を選ぶと安心できることが多いでしょうね。各自の事情でそれを選べないこともあるでしょうけれど。
職員:独立開業の場合は、制限がなさそうというか、組織じゃないから自由が多そうだと思いますがどうですか?
大沢:そうですね。平成30年のメイガス独立開業当初の、私しかいない個人事務所の頃は本当に自由でした!自宅でごろごろ寝っ転がりながら起案したり、海外の法令を日本語訳して解説を書くような、クライアント様の情報を扱わない仕事はお気に入りの海沿いのカフェでやったり、思いつきでふらっと一ヶ月ほど外国のリゾートにいって、ホテルの部屋からWeb会議にでたり、仕事さえやればそれ以外は本当に自由な時代でした。楽しかったなあ。今はもうそんなことできないですね。
職員:それなのにどうして人を雇って組織にしようと思ったんですが?
大沢:自由は楽しいですけれど、私一人が体調不良とか交通事故とかで倒れたら、すぐサービスが提供できなくなってクライアント様に大きなご迷惑をおかけするかも知れない状況が嫌だったんです。私を信頼してご依頼をくださっているクライアント様やカウンターパートの方の期待を裏切りたくないから、私に何かあっても安定的にサービス提供を継続できる組織を目指しました。
職員:行政書士法人の弊所がリクルートサイトでこのコラム記事を掲載するということは、やっぱり、うちとしては、メイガスでの事務所勤務がおすすめですか?
大沢:いやー、うちみたいな弱小事務所に入るのもそれはそれで心配というか…😅。
仕事は難しくて責任は重いし、職員数が少ないから皆忙しいし、年商10億円以上の中堅・大手ファームとかと違って予算も潤沢じゃないし…。状況を改善しようと頑張ってはいるのですが、まだ歴史の浅い企業で道の途中なので…、現状では「教育はめっちゃ充実してます!あと安全保障などのめちゃくちゃレアなお仕事ができます!」くらいしか推しポイントがないんです。
職員:めちゃくちゃマイナスポイント言いますね!?リクルートコラムに書いていいんですか?
大沢:実態を隠して採用後にミスマッチする方が困るので…。それにマイナスポイントが多いからこそ、こんな事務所なのに喜んで働いてくれている今の職員や、大規模事務所ではなくあえて弊所への応募を真剣に考えて頂ける方には、心から感謝しています。
職員:うちの場合は、全員が最初から開業志望ではなく事務所勤務希望だったんですか?
大沢:いや、どっちでもないです。うちで働いてくれている職員は全員、そもそも行政書士なんてよく知らないけど、うちの仕事が珍しくて面白そうと思ってくれて、うちで働きたいと言ってくれています。なので、採用後に所内教育を受けて行政書士試験に合格して、そのまま継続勤務するキャリアの人しか今のところいません。
ただ、合格者・有資格者の方の採用実績はいまのところありませんが、合格者・有資格者の応募を排除しているわけでは勿論ありません。他の行政書士事務所と比較して、わざわざうちに入りたいと思って頂けるなら、それは嬉しいことです。
職員:ちなみに、一旦別の行政書士事務所で勤務してから、そこを辞めてメイガスに移籍して来るキャリアはありですか?
大沢:全然ありです。人生も相性も色々ありますからね。