所内教育紹介(火器)
- 某職員
- 6 日前
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更新日:6 日前
弊所のクライアント・顧問先企業様の中には、防衛装備品のメーカー・商社の方がいらっしゃいます。例えば、陸海空の自衛隊や警察・海上保安庁、同盟国・同志国の官公庁に装備品を納入する商社・メーカーの方に対して、外為法・防衛装備移転三原則を中心に、火薬類取締法や武器等製造法など、様々な火器に関係する許認可のご相談を頂いております。
しかし、火器に関する許認可の申請を行うには、一般的な法令の知識だけでなく、火器自体の知識が必要です。
例えば、官公庁に納品するために銃部品を輸入したり、FCS(火器管制システム)を輸出入する場合は、様々な防衛装備品関係の法令の対応を検討する必要がありますが、そもそも防衛装備品自体の知識がないと対応が難しくなります。
そのため、弊所では火器関係の所内教育にも力をいれており、本記事では、火器に関する弊所の所内教育をご紹介致します。
(ご参考)弊所が提供している防衛装備品に関する法務サービスの紹介ページはこちら
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① 所内での座学
弊所では、火器関係の技術系教育と法律系教育を職員向けに実施しています。
例えば法律系教育科目としては、以下のようなものが挙げられます。
『外為法(武器関係)』『武器等製造法』『銃刀法』『防衛装備移転三原則』『火薬類取締法』『化学兵器禁止法』『生物兵器禁止法』『核不拡散条約』『核兵器禁止条約』『ABM条約』『化学兵器禁止条約』『生物兵器禁止条約』『CCW条約』『対人地雷禁止条約』『クラスター弾禁止条約』等

② 外部での座学
所内での座学のみでなく、外部から専門家にお越し頂き、講話をいただくことがあります。
例えば、直近の教育でお招きした外部講師の先生は、神奈川県警察本部 刑事部捜査第一課等で刑事として長年勤められ、数々の殺人事件・検視・銃器犯罪対策等を担当されてきたご経験を持つ、元警部補で行政書士の濱田先生(濱田行政書士事務所)でした。
濱田先生には、銃刀法における装薬銃砲の定義とロケット砲の関係、金属"製"弾丸と金属"性"弾丸の違い、刃物を用いた残虐な大量殺人事件における防御創や刺切創など、法務から実際の事件現場における状況まで、幅広い内容をご説明して頂けました。
③ 見学・実習
座学で基礎的な知識を得たら、次は見学・実習を通して、実際のところを学んでいきます。
具体的には、陸上自衛隊の武器学校や、外国警察の銃器犯罪対策部署などを研修のために訪問し、隊員や警察官の方から直接お話をお伺いしたり、海外で小火器の射撃実習に参加することもあります。
例えば、タイ王国警察では、押収された密輸銃器の発射能力等を見学させて頂いたり、摘発状況等をお伺いさせて頂きました。
また、武器学校では、戦車、迫撃砲、榴弾砲といった装備品を見学させて頂き、隊員の方から、閉鎖機の歴史や駐退複座装置の歴史等の、火砲の歴史についてのご説明を頂きました。
閉鎖機や駐退複座装置とは、どちらも現代の火砲に不可欠の機構です。
ちなみに、閉鎖機とは砲身の後ろを開閉する機構のことです。大きな火砲では、砲弾を装填する際に、砲身の前の方(砲口)からではなく、砲身の後ろの方(砲尾)から砲弾を装填するのが一般的ですが、そのためには砲身の後ろの箇所を開け閉めできるようにする必要があります。
「砲身の後ろに扉をつけて開閉すれば良いだけじゃないか」と思うかも知れませんが、大砲は発射時の爆風が強いため、半端な強度の扉では吹き飛んでしまいます。そのため、相当強固で分厚く重いシャッターのような扉を作る必要があります。そのようにして作られたのが鎖栓式の閉鎖機です。
しかし、遠くまで重たい砲弾を飛ばそうとすると、発射に用いる火薬の量も多くなり、そのため発射時の爆風も強くなり、シャッター状の扉ではいずれ耐えられなくなります。そのため、シャッター状よりももっと強度を有する砲尾の「扉」として開発されたのが螺式の閉鎖機です。こちらはペットボトルのスクリューキャップやネジのように、ネジ込み式になっているために鎖栓式に比べると製造が大変ですが、強度が上がるだけでなく、密閉力も増えて発射時のガス漏れも減ります。
左:鎖栓式の閉鎖機
右:螺式の閉鎖機
射撃実習で使用した実銃と実弾
所内教育受講者の感想
職員A「銃に関しては、大学の法医学の講義で銃器損傷・銃創を学んだ際に少しだけ勉強したことがあるのですが、今回の教育で銃のメカニズムを知ったことで、銃の運動エネルギーの大きさを知り、人体へもたらす影響をイメージしやすくなりました。また、ダムダム弾禁止条約におけるホローポイント弾の取り扱いなどについても学ぶことができて興味深かったです。」
職員B「まだ2日ほど教育を受けただけですが、座学だけでなく模造銃や遊戯銃を触りながら銃の構造や原理を学び、規制されている銃部品等の理解を深めることができています。今まで、ざっくり『鉄砲』としか考えていなかった私からすると、銃と砲の違いや、火縄銃から雷管式への歴史、産業革命と腔線(ライフリング)などを知ることができただけで、なんだか銃に詳しくなったような気持ちになりました。戦車も中があんなに狭かったんだとか、実際に見てみないと想像もつかないことだらけだなと思いました。」
先の大戦時の戦車の中を覗き込む職員
職員C「担当している顧問先企業様が照準器の輸出入をされているので、射爆照準器やスコープ、ダットサイトなど様々な照準器の実物を拝見できて理解が深まりました。また、教育を受けるまでは『なんで銃口にラッパのようなものがついている銃があるんだろう』と疑問に思っていましたが、消炎器としての機能があると知れてすっきりしました。」
“銃口にラッパのようなものがついている銃”