弊所のクライアント・顧問先企業様の中には、核・原子力関係の企業・研究機関の方も複数いらっしゃるため、核・原子力・放射性物質関係のご相談もよく頂きます。
例えば、核融合炉に関する研究開発時の外為法対応や、放射性同位体の輸出入・使用時の放射性同位元素規制法(旧・放射線障害防止法)対応、身近なところでは、放射性同位体を用いた非破壊検査装置の電離放射線障害防止規則対応などです。
しかし、核・原子力・放射性物質関係の案件を処理するには、一般的な法令の知識だけでなく、原子力関係の最低限の知識が必要です。
例えば、レーザー励起によるウラン同位体の分離に関する国際共同研究を行う場合や、新型転換炉のような重水減速圧力管型原子炉において利用するカランドリアを輸出する場合などは、外為法対応を検討する必要がありますが、原子力関係の知識がないと対応が難しくなります。そのため、弊所では核・原子力関係の所内教育にも力をいれております。本記事では、核・原子力に関する弊所の所内教育をご紹介致します。
(ご参考)弊所が提供している核物質・放射性物質に関する法務サービスの紹介ページはこちら
① 所内での教育
弊所では、核・原子力関係の技術系教育と法律系教育を職員向けに実施しています。
技術系教育科目の一例:『原子力工学』『放射線物理学』『放射線生物学』『放射線化学』『放射線計測学』『放射線安全管理学』等
法律系教育科目の一例:『原子力基本法』『放射性同位元素規制法』『原子炉規制法』『電離放射線障害防止規則』『放射線発散処罰法』『核物質防護条約』『原子力協定』等
座学では、放射線診療技師用の教材や、放射線取扱主任者の教材、原子力系の大学・大学院で使用される教材や、CBRN対策の教材など、様々なものを使います。
所内教育で使用する教材の一部
② 外部への派遣
所内での座学により最低限な技術・法律の知識を得たら、核・原子力に関する外部の教育に参加したり、実習を行います。弊所では、日本原子力発電株式会社や、東海村のいばらき量子ビーム研究センターの施設を外部研修として訪問したり、放射線管理・放射線防護の実習に参加したりと、外部を訪問し、実務者・研究者の方から直接お話をお伺いしています。
面白いところでは、敦賀原発の原子力発電教育シミュレータを用いて、過酷事故事象の教育や、原子炉緊急停止の実習を受けることもあります。(実習だということを忘れるくらい緊張感がありました)
日本原子力発電株式会社の敦賀原発の研修施設に職員を派遣し、原子力専門技術や、原子力周辺技術の教育に参加させて頂く際は、原子力安全に関する法令と改正、原子力発電所の安全設計及び安全評価、シビアアクシデント、原子燃料サイクル、BWR/PWR/FBR燃料の設計、IAEAによる保障措置や核査察、使用済燃料輸送及び貯蔵対策など、様々な内容を数日間にわたって教えて頂いています。
③ 資格取得支援
職員を放射線利用振興協会や、原子力安全技術センターの講習に派遣し、放射線取扱主任者(国家資格)の取得を目指してもらいます。
講習は、放射性同位元素の安全管理手法等を学ぶもので、実物の線源を用いた線量測定の実習や、GM計数管を用いて放射性物質を捜索・発見する実習も行われます。
職員「うちって原子力関係のクライアント様がそんなにいらっしゃったんですね!」
所長「そうなんです。顧問先企業様が所在する東海村にいくこともありますよ。原子力の基礎知識を持つ職員が不足しているので、今は放射線取扱主任者の職員を増やそうとしているところです。今は2名のみですが、教育中が2名おり、来年度には4名になる予定です。」
職員「業務で不安に感じたこととかはないですか?」
所長「ありません。核燃料の研修を受けたり、核燃料に関する相談を受けることはあっても、実物を我々が扱うわけではありませんから。ただ、東海村の顧問先企業様へお伺いした際、『放射線事故を発見したら直ちに被害状況を◯番へ通報!』と書かれた警告を見たときは、自分がそういう場所にお邪魔しているんだなと、改めて実感しました」
職員「外部研修は他社と合同でやるんですか?」
所長「そうです。私が行った際は、他社さんは核燃料の輸送を専門とする会社の方や、電力会社の方、研究機関の方、技術系の公務員の方が参加されていました」
職員「では最後に、原子力関係の研修で一番面白いとか、一番好きな内容ってありますか?」
所長「好きな研修は、日本原子力発電株式会社様の研修ですね。同社の研修に参加させて頂く際は、同社の研修施設に併設された宿泊施設や食堂を利用させて頂けるんですが、これが美味しくてね~!本当にいつも美味しくて、私も毎回のお食事が楽しみなんですよ!」
職員(研修内容じゃなくてご飯の話!?)
食堂のお食事 いつもとても美味しい