本日は、行政書士法人メイガス国際法務事務所代表の大沢に、弊所の化学安全に関する業務について話を聞きました。
職員:まず、化学安全とはなんですか?
大沢:化学安全とは、化学物質の取り扱いにおいて、健康や環境に悪影響を及ぼさないよう安全性を確保することです。これには、開発、製造、輸出、輸入、輸送、販売、使用、排出、廃棄のすべてのステージでの適切な管理が求められます。
職員:メイガスでは、具体的にどのような化学安全関係のサービスを提供しているのですか?
大沢:弊所は行政書士法人ですから、やはり化学安全関係の行政対応をお仕事としています。各ステージで必要な許認可の洗い出しから、申請書類の作成まで、許認可の取得の支援を幅広く実施しています。
職員:化学関係の法令はどういう行政機関が担当しているんですか?
大沢:本当に色んな行政機関が関わりますよ。消防庁、経産省、厚労省、農水省、環境省、税関、自治体、NITE(行政執行法人)など様々です。
例えば濃度10%超の塩酸を海外から輸入する際は、毒物劇物取締法の毒物に指定されているため、都道府県庁の薬事課や保健所等に手続きします。
そして、同じ塩酸を返品で送り返す場合、外国為替・外国貿易法の輸出承認対象貨物に指定されているので、税関に該非判定書を提出したり、経済産業省に承認申請が必要です。※
※ ここでご説明しているのはすべて原則論で、実務では様々な例外や特例が適用できることがあります。例えば、塩酸の輸出に際しては、30万円以下の場合は少額特例が適用できます。
また、塩酸は労働安全衛生法で、SDS(安全データシート)交付対象物質・ラベル表示物質に指定されていますから、厚生労働省の資料等を参照しつつ適切なSDSとラベルを作る必要があります。日本と海外ではSDSやラベルの法定記載事項が異なりますし、準拠する法令・規格も異なりますから、海外から送られてきた英文SDS・ラベルを単に和訳すればいいわけではありません。
弊所ではこれらの化学物質の許認可要否の判定、許認可取得の支援、SDSやラベルのリーガルチェック等を行っています。
職員:どういうところが難しいですか?
大沢:新開発の混合物で、様々な法令で規制されている化学物質を原材料で使用しているケースで、投入量で判断すれば法令の規制値を超えるけれど、混和後に反応が起きて最終製品に残留する原材料が規制値未満しか残っていないんじゃないかと思われる場合など、ややこしい場面は多くあるので、こういうときは、監督官庁といっぱい協議します。
あと、製品理解も難しいですね。「セルロース溶媒として使用する⽔素結合受容能の高いアニオン系イオン液体の開発をするので関係法規の対応をしてほしい」とか「アルキルホスホニルジフルオリドを輸出するための外為法対応をサポートしてほしい」とか。まず商品知識がないと本当に厳しいです。この仕事に限った話ではありませんが、日々勉強が大事です。
職員:それだけ多くの法律や行政機関が関わるとなると、照会や調整も大変そうですね。
谷垣:でも、環境省の某地方事務所の方とお話させて頂くのは大好きです。個人的に好きな担当官の方がいらっしゃいまして、すごい親切かつ丁寧に教示してくださる方なんですが、お名前を名乗られる際に、「東山、イーストマウンテンです。」(※仮名)って言われたのがめちゃくちゃ面白くて(笑)
大沢:ええ!?そんな方いるの!?そんな面白い事言われたら、つられてこっちも「ビッグリバー、大沢です」とか言っちゃいそう(笑)
職員:化学安全の関係では、どういう会社さんが相談に来られますか?
大沢:化学メーカー、化学品商社、石油メジャー、研究施設、医薬品・医療機器メーカーなど、幅広い企業・団体の方々からご相談を頂いています。
創業百年以上の伝統のある化学品商社・化学メーカーのクライアント様も複数いらっしゃいますが、弊所と顧問契約を締結して頂いたことで、初めて化学品分野に乗り出した別分野のメーカーさんや商社さんもいらっしゃいます。
職員:最後に、化学安全業務のやりがいは何ですか?
大沢:化学安全業務は、企業が安全に化学品を取り扱い、流通させ、豊かな社会を築くために重要な役割を果たしています。弊所が何年もかけてサポートさせて頂くことで、開発された新素材の法対応・行政対応が円滑に進み、無事に世に出たときは本当に感動しました。
また、弊所は安全保障をメインとしている事務所なので、軍用化学製剤の輸出規制のチェックや、化学兵器禁止違反の査察対応など、緊張感のある場面もありますが、すべて難しいけれど非常に重要な仕事だと考えています。
